オランダの茶色いパン

Digging into the taste of bread in Holland


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海の名前の素朴パン Waddenbrood

いつものパン屋からちょっと河岸を変えて訪れたパン屋さん。全粒粉(Volkoren)のラックにずらずらと並ぶ茶色パンに、見なれない顔ぶれがありました。Waddenbroodというパンです。

Waddenて、北側に広がるワッデン海のことかいな? 塩味??

家に帰って調べると、ワッデン海のあたりでとれた小麦で作られている、全粒粉にライ麦を配合しているとありました。ワッデン小麦という名の小麦粉もあり、風車で粉ひきされた小麦粉も売られているようです。

ワッデン海はそのものが干潟であり、寄せては返す波で海から運ばれたミネラル成分が泥土に豊富にたまるので、その地に茂る牧草をはみはみして育った牛は乳牛として優秀で、その種がホルスタインの原種となった…という話を聞いたことがあります。ちなみに、このWaddenbroodは乳糖フリーなので、牛乳アレルギーの人も大丈夫、というのがちょっと皮肉ですね。

食べた感想はというと、自然食品ショップのおからクッキーを思い出しました。味が似ているわけではなく、何というか味気ない…。おからクッキーはバターも使っていないし、砂糖も控えめだし、健康おやつとしては優秀なのかもしれないですが、どこか楽しくない。ビーガンどころか肉も大好き、グルテンフリーどころかグルテン大好きな私は、素パンを楽しむには修業が足りないのかもしれません。なんの修業かわかりませんが。

カリッとトーストして、ジャムやらハチミツやらをどこってり塗ったり、ハムとサラダをこんもり乗っけて楽しみました。許してください!

 


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ミートボール、カレーと出合う Frikandelbroodje

オランダの王者スナックといえば、パタット、クロケット。その次にくるのが、このフリカンデルです。スナック自動販売機でお馴染のFEBOでも、15センチほどのフリカンデルがコインロッカーで温められています。

硬質なその響きで一発で覚えてしまったフリカンデル、一見、ソーセージです。調べてみると、微妙に違うようです。まず、皮がないのでソーセージとは名乗れません。そしてバリエーションは多々あるようですが、お約束は揚げてあること。そして、豚肉、牛肉、鶏肉(昔は馬肉も使っていたのだとか)の挽肉をハンバーグよりもずっと滑らかにしてあることです。揚げていることもあり、握ってもくたらず、すっくと天に向かって立っています。

このフリカンデルの誕生は諸説あります。1950年代、ドートレヒトの肉屋さんが考案したというのが有力らしく、ミートボールとして売っていた商品が原材料に使う小麦粉の配分に関する規制によりミートボールと名乗れなくなり、ほんだったらと、材料はそのままに名前をすげかえたのだそうです。

で、フリカンデルの起源をたどると、17~18世紀のレシピブックにその名前はすでにあるそうで、ドイツでもfrikadelle、イタリアではfritella、フランスでもfricandeau、デンマークではfrikadellerというミートボールがあります。ドートレヒトの肉屋さんが考案した名前にはfrikandelと、綴りに”n”が入っていますが、frikadelというミートボールは広く知れ渡っている料理なので、商品の名前を変えたら売れなくなるやんけ!という心配はなかったのではないでしょうか。。

揚げたソーセージ??なんだか重そう…と、スナックとしては手が伸びなかったのですが、パン屋さんでのお昼時、なぜか、いつものソーセージブローチェからフリカンデルブローチェを選んでみました。

ソーセージブローチェの揚げ版かいなとパクついてみると、甘めのカレーソースがいい塩梅でからんでいます。うまい。このパン屋さんのオリジナルレシピかと思いましたが、他のパン屋のフリカンデルブローチェにもカレーソースがほんのりかかっていました。インドネシア料理の影響もあるようです。ベルギーでは、Frikandelというとカレーソーセージと呼ばれているのだとか。庶民の食べ物は色んな国に見られるけれど、各国それぞれ微妙にオリジナルがあり、呼び名が変わっていく典型かもしれませんね。

 

 

 

 

 


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あまずっぱいサクランボパイ Kersenflap

オランダ語でさくらんぼはKers(複数でKersen)といいます。6月末からスーパーに出回り始める夏の果物です。日本の佐藤錦のようなほんのりとした赤ではなく、えんじ色のダークチェリーです。ユトレヒト州のBetuweという場所が果物の産地として有名で、偶然、夏にそのあたりをドライブしたとき、道路沿いにサクランボ屋台が並び、さながらサクランボ街道のようになっていました。

ちなみにBetuweでは、春になると、桜の花見ならぬ、果物の花見スポットになります。

そんなダークチェリーをたっぷりと使ったKersenflapは、appelflapと同様、ざらめをまぶしたパイで、形も三角形が多いです(写真は半月型)。ざらめの食感を楽しむには、がっつりとかぶりつける鋭角が大切なポイントなんでしょうか。

Kersはフラーイというタルトでも定番のソースです。若干高めとはいえ、佐藤錦ほどでもないので、スイーツのソースとして惜しみなくふんだんに使うことができます。

KersenflapやKersenvlaaiを食べながら、気づきました。果物として食べるチェリーはやさしい甘さなのに対し、スイーツのソースになると、酸っぱさが加わり、きりっとした味になる。一方、甘さにすっぱさがきらっと光るストロベリーは、vlaaiでは若干しまりのないゆるゆるの甘さが勝っていた。熱処理を加えると、味に変化が起こるのでしょうか。ちなみに色目も、ルビーのようなサクランボソースに対しイチゴのほうは赤茶のずずっとした色でした(何もイチゴを陥れようというわけではないですが)。

そして、もうひとつ気づいたことがありました。日本ではスイーツのチェリーというと、パフェの彩りや、砂糖漬けだったり、どちらかといえばアクセントに使われることが多く、スイーツの素材としては今一つと思っていました。それは経験不足からくる誤解ではなかったかと。考えてみれば、1パックまるごとのサクランボソースを使ったスイーツって、味わったことがなかったかもしれません。毎年その時期になると楽しみにしていた果物だったのに、その奥深い魅力に気づいてやることができませんでした。灯台下暗し。すいません。Kersenflapをほおばりながら、サクランボを見直したのでありました。

 

 


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オランダのタルト Vlaai

パティシエやショコラティエによって創作(”作られた”じゃなく)されたスイーツは、クリエイターズスイーツとも呼ばれ、デパ地下ではアートと見まごうばかりの美しさでショーケースを飾っています。そんなスイーツと比べ、オランダのスイーツはずいぶん素朴。ベイユンコルフなどのデパートに美し系のケーキがあるっちゃーあるんですが、見た目も味もどこか大味。なので、オランダでは同系列ではなく、ならではのスイーツを楽しむことにしましょう。

オランダスイーツの代表といえば、Vlaai(フラーイ)というタルトです。直径は27~30センチという大型で、厚みは約2.5センチ。さっくりとかためのタルト地に、フルーツ、あるいはカスタードクリーム、クランブルなどがのっかります。ドイツからもたらされたといわれており、修道院などでは儀式用のパンとして使われていたそうです。

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フラーイは全国のスーパーなどどこででも買い求めることができますが、出身は南のリンブルグ州。リンブルグ州はベルギーに近いこともあるのか、オランダにしては珍しく人生の楽しみのなかに「食」が入っています。リンブルグ州の都市マーストリヒトも美食の街として知られています。

この前、マーストリヒトに行ってみました。ベルギーに降り立ったのかと思うくらい雰囲気がベルギーに似ており、通りのショーウィンドウが食いしん坊を誘います。

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「なに食べようかな」のワクワク感が自然に湧きあがってきます。小路を通ると気になるパン屋さんがあり、そこでもフラーイがおいしそうに並べてあります。

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ショーウィンドウにはりついていると、同じくじーっと見入っているフランス人女性2人連れと眼が合い、「通り過ぎることはできないわよねー」と目くばせして一緒に中に入りました。

リンゴ、リンゴとサクランボ、イチゴ、クランブル、カスタード…。あぁどれもおいしそう。決めかねて大型半分を2種類求めました。1キロはあるだろう2つのフラーイケースが傾かないよう気をつけながらスナップ撮って街歩きをするのは大変でしたが、さくっと軽く個性をおさえたタルト地に甘酸っぱいサクランボとリンゴのコンビは、上品でバランスのとれたおいしさ。苦労して持ち帰った甲斐がありました。


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どうやって食べる?!  Tompoes

語感が妙に響くオランダ語があります。

例えば、展示会を表す「テントンステリン」。初めて聞いた時、トーテムポールがずらずら並ぶ会場が頭に浮かびました。かたいが「ターイ」、うるさいが「ラバーイ」。単語の最後に「小さきもの」を表す….tjeとかpjeも何でもかんでもつけまくるのも気になります。コップがコップェ、モバイルがモバイルチェ、ひとつ(エーン)が、エーンチェとか。そんな妙な響きをもつ単語を密かにすっとんきょう系オランダ語と呼んでいます。

このお菓子「トンプス」も、若干すっとんきょう系統で、さらに脱力系な響きもあります。スーパーのベーカリコーナーに常にある日常ケーキで、ことHEMAのトンプスが有名です。

ミルフィーユを素朴にした感じで、甘さを抑えたホイップクリームをパイ生地でサンドがお約束。どこで買っても、長方形、2枚パイ挟み、上部のアイシングは同じです。

アムステルダムのベーカリーが発案したといわれており、名前はヨーロッパを巡業していたアメリカのサーカスの出し物「親指トム将軍」(General Tom Thumb)からヒントを得たという説があります。後に、フリース人の演劇俳優でこびとJan HannemaがAdmiral Tom Pouceと名乗ったそうです。そういえば、ミルフィーユはナポレオンとも呼ばれていますね。パイと軍人の間には人知れず深いつながりがあるのでしょうか。

アイシングはサーモンピンクが一般的ですが、4月27日の国王の日、重要なサッカーの試合の前には、ナショナルカラーであるオレンジが出回ります。写真のトンプスも4月25日に買い求めたため、オレンジ色になっていました。

さて、このトンプス。きれいに食べるのが大変むずかしい。アイシングがかかったトップのパイがかたいのに、その下のクリームはふわふわ。フォークをナイフ代わりに入刀すると、パイが板となってクリームを押す格好となり、中からむにゅにゅにゅーとでてきます。とにかくかたさのバランスが全くとれていないのです。

横に倒す、味と食感のハーモニーをあきらめてとにかく上のパイだけ食べる、ぐちゃぐちゃでもとにかく食べ進めるなど色々な試し方がありますが、オランダ人友人が「ハーモニーを保ちつつ、きれいに」食べる方法をこっそり教えてくれました。

上のパイ地をはがし、下部のパイ地の下に敷く

だそうです。

 

 


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天然酵母茶色パン Desembrood

日本の食パンの半分の薄さ、ライトなふわふわ感のブラウンブレッドを常食していますが、たまにクラムがしっかりしたパンも食べたくなります。そんなときは、家の近くにあるBakkerswinkelへ。アムステルダム、ロッテルダム、ユトレヒトなどでこぢんまりとチェーン展開しているカフェで、店頭ではパンも売っています。あまりにも家に近いため、カフェ利用をしたことはありませんが、ハーグ店は店内もゆったりとしていい雰囲気です。

お店の自家製パンかと思っていたのですが、Vanmennoというベーカリーのパンだということがわかりました。Vanmennoは小麦粉、天然酵母など素材にこだわるAmbachtelijke bakkerij (パン職人の店)という部類に入るパン屋で、素材のみならずパンのもつ雰囲気にもこだわり、成功したチェーン店といえるでしょう。Vlaams Broodhuysと似ていますね。

ルヴァン種(オランダ語ではdesemにあたる)によるフレンチブレッドを売りにしているだけあって、クラムとクラストの固さバランスがいいです。ちなみに、デンハーグにはフレンチベーカリーもあるし、バゲットを置いているパン屋さんもあるのですが、クラスト今いち、クラムは密すぎと2重苦で……。Vanmennoのフレンチパンは、ブールを縦長にしたようなサイズ1キロのパンのみで、ほっそりとしたバケットは販売していないのが残念なのですが、それでも主張のあるクラムをかみしめながら、しっとりとしたクラムをほおばるという久しく体験していなかったフレンチブレッドの楽しみを思い出させてくれました。

普通の茶色食パンが1ユーロちょっとで買えるところ、こちらは半分(500g)で2.9ユーロ。お高めですが、クラムがしっかりしているので、食パンより長持ちします。

 

 

 


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小さなピストルサンド Pistolet

オランダ全土、どこのカフェでもパンメニューは1種以上あるのは保証します。ブローチェとアウデカース(古チーズ)、ハム、クロケットなどのおなじみ具材はもちろんのこと、パニーニ、トスティなどパンを種類別に豊富に取り揃えているカフェもあります。

とある日、カフェでランチをとメニューをみたらピストレがありました。ピストレはPistoletと書きます。ベルギー出身のパンで、見た目はプールの小型、あるいはコッペパンのよう。”小型”であること、そしてここオランダでは、クラストかため、さっくりしたクラムと、ほぼプチバケットです。

img_3043名前の由来は、拳銃の「ピストル」から、昔使われていたコイン「Pistole」からと、諸説あります。

ベルギー人にピストレってどんなパン?と聞いたことがありました。「小さいパンで、バケットに似てるかなあ。日曜日になると、ピストレを山のように入れたバスケットをテーブルの真ん中にドン!っと置いてね、ハムとか、チーズとか並べてね…」に目をキラキラ輝かせて、途中で味まで思い出したのか、うっとりしながら話してくれました。

写真はGebakken ei(卵焼き)とSpek(ベーコン)です。