オランダの茶色いパン

Digging into the taste of bread in Holland


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クロカントなパン Boterknopen

オランダ語にKrokantという形容詞があります。訳すと「サクサク」「カリッ」。冷凍フライドポテトの袋にもSuper Krokant!などの誘い文句が書いてあったりします。ものによりますが、日本でもサクサク、カリカリは最上の誉め言葉。洋の東西を問わず、サクッ、カリッは大切な要素なんですね。ちなみに、日本だと外側カリッ、中はふわっがセットになっていることが多いですが、オランダにおいては、中はズシッはあれど、ふわっはあまりお目にかかったことがありません。

ある日。いつもは通らない道でパン屋に出会いました。素敵な外観に誘われて入ってみると、クロワッサンの横に、見慣れないパンがいました。Boterknopen。knopenはknoopの複数で、knoopはボタンという意味です。

ぽってりとした形を作り出しているのは、幾重にも重なった生地。

かたそう。うまそう。

「これってクロワッサンと同じ?」「ほぼ一緒だけど、クロカントよ」と店員さん。バターが若干苦手なので、名前にBoter(バター)を冠するパンは、さぞかし濃ゆいのでは…一瞬迷いましたが、クロワッサンも普通に食べている自分に気づき、買ってみました。

オランダで食べるクロワッサンは少し外サクカリで中ふわ、あるいな全部ふわが多いのですが、このBoterknopenは最後までカリカリでした。

レシピを見ると、500グラムの生地に対し、バターは200グラム。同じサイトでクロワッサンのレシピをみたら、同量の生地で170グラムくらい。ちょっとバター多めですが最後までおいしく食べられました。

日本のコロッケが生パン粉でカラッと揚げてサクサクであるのに対し、オランダのクロケットは外側硬めで食感はどちらかというとカリカリ。クロワッサンもサクサク、ホロホロが命ですが、Boterknopenは最後までカリカリ。オランダの人たちはかためがお好きなのでしょうか。同じクロカントでも、微妙に違うのがおもしろいですね。

 

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ミートボール、カレーと出合う Frikandelbroodje

オランダの王者スナックといえば、パタット、クロケット。その次にくるのが、このフリカンデルです。スナック自動販売機でお馴染のFEBOでも、15センチほどのフリカンデルがコインロッカーで温められています。

硬質なその響きで一発で覚えてしまったフリカンデル、一見、ソーセージです。調べてみると、微妙に違うようです。まず、皮がないのでソーセージとは名乗れません。そしてバリエーションは多々あるようですが、お約束は揚げてあること。そして、豚肉、牛肉、鶏肉(昔は馬肉も使っていたのだとか)の挽肉をハンバーグよりもずっと滑らかにしてあることです。揚げていることもあり、握ってもくたらず、すっくと天に向かって立っています。

このフリカンデルの誕生は諸説あります。1950年代、ドートレヒトの肉屋さんが考案したというのが有力らしく、ミートボールとして売っていた商品が原材料に使う小麦粉の配分に関する規制によりミートボールと名乗れなくなり、ほんだったらと、材料はそのままに名前をすげかえたのだそうです。

で、フリカンデルの起源をたどると、17~18世紀のレシピブックにその名前はすでにあるそうで、ドイツでもfrikadelle、イタリアではfritella、フランスでもfricandeau、デンマークではfrikadellerというミートボールがあります。ドートレヒトの肉屋さんが考案した名前にはfrikandelと、綴りに”n”が入っていますが、frikadelというミートボールは広く知れ渡っている料理なので、商品の名前を変えたら売れなくなるやんけ!という心配はなかったのではないでしょうか。。

揚げたソーセージ??なんだか重そう…と、スナックとしては手が伸びなかったのですが、パン屋さんでのお昼時、なぜか、いつものソーセージブローチェからフリカンデルブローチェを選んでみました。

ソーセージブローチェの揚げ版かいなとパクついてみると、甘めのカレーソースがいい塩梅でからんでいます。うまい。このパン屋さんのオリジナルレシピかと思いましたが、他のパン屋のフリカンデルブローチェにもカレーソースがほんのりかかっていました。インドネシア料理の影響もあるようです。ベルギーでは、Frikandelというとカレーソーセージと呼ばれているのだとか。庶民の食べ物は色んな国に見られるけれど、各国それぞれ微妙にオリジナルがあり、呼び名が変わっていく典型かもしれませんね。

 

 

 

 

 


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小さなピストルサンド Pistolet

オランダ全土、どこのカフェでもパンメニューは1種以上あるのは保証します。ブローチェとアウデカース(古チーズ)、ハム、クロケットなどのおなじみ具材はもちろんのこと、パニーニ、トスティなどパンを種類別に豊富に取り揃えているカフェもあります。

とある日、カフェでランチをとメニューをみたらピストレがありました。ピストレはPistoletと書きます。ベルギー出身のパンで、見た目はプールの小型、あるいはコッペパンのよう。”小型”であること、そしてここオランダでは、クラストかため、さっくりしたクラムと、ほぼプチバケットです。

img_3043名前の由来は、拳銃の「ピストル」から、昔使われていたコイン「Pistole」からと、諸説あります。

ベルギー人にピストレってどんなパン?と聞いたことがありました。「小さいパンで、バケットに似てるかなあ。日曜日になると、ピストレを山のように入れたバスケットをテーブルの真ん中にドン!っと置いてね、ハムとか、チーズとか並べてね…」に目をキラキラ輝かせて、途中で味まで思い出したのか、うっとりしながら話してくれました。

写真はGebakken ei(卵焼き)とSpek(ベーコン)です。

 


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お肉屋さんのデリパン Ragoutpastei

パンを扱うのはパン屋さんに限りません。例えば、Slagerij。Slagerijとは肉屋さんのこと。お肉の切り身のみならず、パンにのっけるのに最適なハム、サラミ、ソーセージなどのほか、ハムサラダ、ミートボールなどのデリも売っています。すべてのお肉屋さんにあるわけではないですが、パン好きのオランダ人の欲望を満たすべく、ソーセージパン、そして今回紹介するRagoutbroodjeを揃える店もあります。

パイ生地を茶巾のように上部をきゅっと絞った手のひらサイズのデリパン。そのサイズのわりにはずっしりした重さです。なかにはラグー(肉の煮込み)がたっぷり入っています。img_9774

日本でいうところの冬になると登場するシチューパンに近いでしょうか。日本の場合は、クリームシチューやビーフシチューなどがありますが、こちらはクリームが主流のよう。クロケットの中身に、もう少し肉のかけらを増やした感じです。こちらも冬のデリパンのよう。

パン屋さんにもパイ生地のRagoutbroodjeがありますが、このパンの真髄は具にあり。肉屋さんのパンを楽しんでみましょう。

ところで、オランダの言葉にはけっこうフランス語が残っています。お財布はportemonneeとか、傘がparapluだったりとか。

パン屋のオランダ語Volkoren(全粒粉)やDesembrood(サワー種のパン)は、オランダ上陸しばらくは何のパンかさっぱりわからず、覚悟をもって注文したものですが、このパンに限っては初のご対面にもかかわらず、「ラグー」からどんなパンかほわんと想像できました。日本でもフランス語が浸透していたのだと改めて感じたことでした。ただし、日本では料理に限るようですが。


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ハンバーガーじゃないよ Broodje bal

オランダの名物クロケット(コロッケ)、パタット(ポテトフライ)があまりにも有名なので、陰に隠れていますが、ミートボールもオランダの伝統的な食べ物。

ミートボールはgehaktballenといいます。日本風にいえば肉団子。gehaktは挽肉、ballenはボール(複数)という意味です。クロケットやパタットはストリートスナックとして道すがら楽しむものですが、ミートボールはデリで買うか、レストランで頼むか、家庭で作るかして座って食べるという感じ。むろん、その場で食べてもいいのですが、道すがらポテトフライを食べる人はジーンズ姿でもスーツ姿でもよく見るものの、店先でミートボールをがっつくオランダ人は未だにお目にかかったことがありません。

友人とカフェでランチをすることになり、いつものようにパンメニューずらずs-IMG_7613ら~を眺めていたら、Broodje balが目につきました。自家製ミートボールのサンドイッチとな。ピーナツソースかマスタードソースを選ぶそうだ。決めました。

出てきた料理は、丸いバンズに肉団子。つまり、ハンバーガー?

いえいえ、ハンバーガーは平たいハンバーグが1枚挟まれているのに対し、こちらは球体のミートボールを4つに切って挟んでいます。他の具もありません。シンプルに肉団子だけです。

ナイフ&フォークを使わず、ハンバーガーではないですが、ハンバーガー風に手にもつと、かためのパンと指におされて、ミートボールはくたくたーっと身を崩していきました。

Gehaktballenは小麦粉をはたいて外側をカリッとさせることもあるようですが、私がいただいた肉団子はとてもやわらかくてパンにもなじみ、最後までパン&肉を均一に楽しむことができました。

テーブルに料理が出てきたときは、団子1個だけかよ~と思いましたが、どっこい、かなりのボリュームでした。混ぜもののない良心的な肉団子だったのだと思います。


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パイ考 Pasteitje

惣菜パンにはあまり種類がないと前に書きました。その考えを少し改めたいと思います。

「日本のパン屋さんで見られるハムマヨパンのような普通のパン生地の惣菜パンがないが、惣菜パンはある」

普通のパン生地じゃないなら何の生地か。それはパイ生地です。

 

その外見に、生まれてから今までの脳内パン記録データがちゃかちゃかと動き、「甘」を抽出してしまいますが、その総菜パイは「インドネシア風」でした。中にはサンバルなどで味付けした挽き肉が入っていました。

パイはオランダ語でPastei。Pasteitjeだと小型のパイという意味になります。日本だとパイ生地はアップルパイとか、ベリー類がのっかったものとか、お菓子パンに多いと思うのですが、オランダではどちらかというと惣菜系パンに振り分けられるようです。1年いたイギリスでも、ペーストリーという名でパイ生地の大型の惣菜パンが各種売られていて、よくランチにしたものです。日本では唯一ミートパイくらいでしょうか。

”Pastei”で画像検索してみたところ形は違えども惣菜パンがずらずら出てきました。”パイ”で検索してみるとお菓子パンがずらずら。形は違えどもそのほとんどがアップルパイでした。パイ生地へのアプローチがまったく違うのは明らかです。オランダでは普通のパン生地を惣菜パンにする発想がないようで、日本では、パイ=甘いお菓子パンの固定概念が強すぎるようです。推測ですが、日本に初めて紹介されたパイはお菓子で、後に甘いものとして発展していったのではないでしょうか。

一方、ヨーロッパでは甘いパイもありますが、食事パイも並行して発展していったのだと思います。普通のパン生地は白ごはんのように素を保って、こしひかりやささにしきのように小麦粉の配合や種類で発展していき、惣菜パンはパイなど他のパン生地で発展していったとか。

日本では食パン、カレーパン、ソーセージパンなどは同じレベルで買うと思うのですが、オランダでは総菜パンを買う機会は食パンほどではありません。ちょっと遠い存在なのか、買うときのシチュエーションや気分も違うようです。少なくともツレのオランダ人は。おかずパンが食べたければ食パンの上に何かのっければいいわけで、わざわざ惣菜パイに手をのばす必要もないというか。表で小腹がすいた時のスナックようです。

 

 


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はさみすぎるパンたち Luxe broodje

オランダ人のお宅にお昼どきにお呼ばれすると、食パン数種、チーズ数種、ハム数種、ジャム数種がテーブルにずらっと並んだランチを用意してくれることがよくあります。パン1枚を手に取り、好きな具材をとるのですが、”食パン1枚・具1種”が暗黙のお約束です。チーズにハムをのっけようと思えばできなくもないし、そうしたとしても誰も何も言いませんが、どうもテーブルマナー反するようで、裕福なご友人にお呼ばれした時も、みなさんパン1枚とってチーズのっけ、また1枚とってはハムのっけを繰り返していました。

1枚1種のピューリタン的な抑制の反動かどうかはわかりませんが、カフェでパンメニューを頼むと、驚愕するボリュームの具材がはさまれたパンがやってきます。具材が溢れてパンが見えないほどです。かぶりつきはまず無理。オランダ人に習ってフォーク&ナイフでいただきます。

そんな具材もりもりのパンは、Luxe broodjeとも呼ばれています。Luxeは贅沢な、豪華な、という意味。メニューにLuxeと書かれているわけではなく、カフェでパンメニューを注文するとLuxe仕立てで出てくるのです。

日本のカフェにおけるパンメニューは、ベーカリーカフェではない限り、具材がはみでずにきれいに均一にはさまったサンドイッチとか、主菜があって付け合わせとして各種パンとか、軽食および脇役からどうしても昇格できない存在のように思います。一方、オランダのカフェでは、茶色パン、サンドイッチ、パニーニ、トスティなどなど主流メニューで、スープやサラダとかを頼むと、パンは付け合わせになります。第一はさめないですよね。

具材はさみすぎLuxeパンは、和食でいうところの丼めし的な存在なんではと推察します。定食における茶碗ごはんではなく、おかずと一緒にごはんをがつっと食べたい時がありますよね。かつ丼とか、親子丼とか、天丼とか。ごはんと一緒におかず食べた!っていう満足感が得られますよね。

オランダ人友人と一緒にランチをした時、「あまりお腹すいてないのよね~。トスティにしよっと」と友達はひとりごちていました。というわけで、カフェでランチをする時、どんぶりモードなら普通のパンメニューを、お茶漬けモードならトスティやパニーニを頼むようにしましょう。