オランダの茶色いパン

Digging into the taste of bread in Holland


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じっと我慢のスプレッド Appel Stroop 

幼い頃、パンのテーブルにいつもいたけど手が伸びなかったもの、ありませんか?

私はオレンジマーマレードです。オレンジピールの苦さが苦手で、母親に任せると大嫌いなマーガリンをのべーっとのばした上にこってりと塗られ、マーガリン味+甘い+苦いで泣きたくなるほどでした。遠足のサンドイッチにされようもんなら、もう……。

そんなオレンジマーマレード的なスプレッドがオランダにもありました。Appel Stroopです。うちに遊びに来たオランダ人の「わ、アップルストロープ使ってるの!」とか「健康にはいいんだけどねぇ…」とか、反応がはかばかしくないのです。唯一の好反応が「おばあちゃんの家にあった!」でした。どうも古くっさいスプレッドとして認知されているようです。

リンブルグ(オランダとベルギー)、ドイツに起源が求められ、中世のころから存在していたというストロープ。修道院や農家で果物を保存するために作られていたそうです。リンゴをゆっくりと煮詰めた後、貯蔵しながら水分を蒸発させいくそうで、濃縮していくうちにリンゴの中の糖分がキャラメリゼされていくそうです。

このストロープを語るとき、決まって言われるのが「鉄分豊富」です。待てよ。リンゴに鉄分ってあったっけ? 昔はリンゴを煮詰めるときに鉄製や銅製の鍋を使っていたから、缶で保存されているうちに…など諸説あり。謎なのが銅製の鍋。銅に鉄分ってあったっけ? 英語やオランダ語の資料を見ても「昔は銅製の鍋で長時間煮込んでいた」で説明が終わっているため、よくわかりません。銅は鉄から赤血球が作られるのを助ける栄養素なので、そのことを言っている?

ともあれ、アップルストロープは鉄分豊富!が不動のキャッチフレーズというのは今でも変わりません。しかし、ステンレススチール鍋を使い、ガラスなどで瓶詰される現代のプロセスだとリンゴが鉄分と出会う場面がありません。どうしているのかとさらに調べたら、鉄分は主に材料のひとつ甜菜からとって面目を立てているようです。よかった(なにが)。

味はプルーンに似ていて、パッケージがなかったらリンゴとは思わなかったでしょう。どす黒い色は冴えないし、めちゃくちゃおいしいわけでもなく、でも、すごく長持ちするので「健康のために」と買い求めるも忘れさられる不遇なやつ。それでも、中世からそうであったように、台所の片隅でじーっと出番を待っています。

 

 

 

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