オランダの茶色いパン

Digging into the taste of bread in Holland


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オランダのタルト Vlaai

パティシエやショコラティエによって創作(”作られた”じゃなく)されたスイーツは、クリエイターズスイーツとも呼ばれ、デパ地下ではアートと見まごうばかりの美しさでショーケースを飾っています。そんなスイーツと比べ、オランダのスイーツはずいぶん素朴。ベイユンコルフなどのデパートに美し系のケーキがあるっちゃーあるんですが、見た目も味もどこか大味。なので、オランダでは同系列ではなく、ならではのスイーツを楽しむことにしましょう。

オランダスイーツの代表といえば、Vlaai(フラーイ)というタルトです。直径は27~30センチという大型で、厚みは約2.5センチ。さっくりとかためのタルト地に、フルーツ、あるいはカスタードクリーム、クランブルなどがのっかります。ドイツからもたらされたといわれており、修道院などでは儀式用のパンとして使われていたそうです。

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フラーイは全国のスーパーなどどこででも買い求めることができますが、出身は南のリンブルグ州。リンブルグ州はベルギーに近いこともあるのか、オランダにしては珍しく人生の楽しみのなかに「食」が入っています。リンブルグ州の都市マーストリヒトも美食の街として知られています。

この前、マーストリヒトに行ってみました。ベルギーに降り立ったのかと思うくらい雰囲気がベルギーに似ており、通りのショーウィンドウが食いしん坊を誘います。

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「なに食べようかな」のワクワク感が自然に湧きあがってきます。小路を通ると気になるパン屋さんがあり、そこでもフラーイがおいしそうに並べてあります。

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ショーウィンドウにはりついていると、同じくじーっと見入っているフランス人女性2人連れと眼が合い、「通り過ぎることはできないわよねー」と目くばせして一緒に中に入りました。

リンゴ、リンゴとサクランボ、イチゴ、クランブル、カスタード…。あぁどれもおいしそう。決めかねて大型半分を2種類求めました。1キロはあるだろう2つのフラーイケースが傾かないよう気をつけながらスナップ撮って街歩きをするのは大変でしたが、さくっと軽く個性をおさえたタルト地に甘酸っぱいサクランボとリンゴのコンビは、上品でバランスのとれたおいしさ。苦労して持ち帰った甲斐がありました。

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どうやって食べる?!  Tompoes

語感が妙に響くオランダ語があります。

例えば、展示会を表す「テントンステリン」。初めて聞いた時、トーテムポールがずらずら並ぶ会場が頭に浮かびました。かたいが「ターイ」、うるさいが「ラバーイ」。単語の最後に「小さきもの」を表す….tjeとかpjeも何でもかんでもつけまくるのも気になります。コップがコップェ、モバイルがモバイルチェ、ひとつ(エーン)が、エーンチェとか。そんな妙な響きをもつ単語を密かにすっとんきょう系オランダ語と呼んでいます。

このお菓子「トンプス」も、若干すっとんきょう系統で、さらに脱力系な響きもあります。スーパーのベーカリコーナーに常にある日常ケーキで、ことHEMAのトンプスが有名です。

ミルフィーユを素朴にした感じで、甘さを抑えたホイップクリームをパイ生地でサンドがお約束。どこで買っても、長方形、2枚パイ挟み、上部のアイシングは同じです。

アムステルダムのベーカリーが発案したといわれており、名前はヨーロッパを巡業していたアメリカのサーカスの出し物「親指トム将軍」(General Tom Thumb)からヒントを得たという説があります。後に、フリース人の演劇俳優でこびとJan HannemaがAdmiral Tom Pouceと名乗ったそうです。そういえば、ミルフィーユはナポレオンとも呼ばれていますね。パイと軍人の間には人知れず深いつながりがあるのでしょうか。

アイシングはサーモンピンクが一般的ですが、4月27日の国王の日、重要なサッカーの試合の前には、ナショナルカラーであるオレンジが出回ります。写真のトンプスも4月25日に買い求めたため、オレンジ色になっていました。

さて、このトンプス。きれいに食べるのが大変むずかしい。アイシングがかかったトップのパイがかたいのに、その下のクリームはふわふわ。フォークをナイフ代わりに入刀すると、パイが板となってクリームを押す格好となり、中からむにゅにゅにゅーとでてきます。とにかくかたさのバランスが全くとれていないのです。

横に倒す、味と食感のハーモニーをあきらめてとにかく上のパイだけ食べる、ぐちゃぐちゃでもとにかく食べ進めるなど色々な試し方がありますが、オランダ人友人が「ハーモニーを保ちつつ、きれいに」食べる方法をこっそり教えてくれました。

上のパイ地をはがし、下部のパイ地の下に敷く

だそうです。

 

 


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季節のスパイスクッキー2 Taai-Taai

Speculaas同様、11月の声を聞いた途端に、あちこちのパン屋やスーパーで見かけるお菓子があります。名前はTaai-Taai。ターイターイと発音します。独特の語感で一発で覚えられましたが、Taaiは英語でTough、かたいという意味です。シンタクラースやシンタクラースのお付きのズワルトピートの型にぬかれたビスケットに、これから始まるシンタクラースのお祭り月間への期待も高まります。

かたいといっても、堅焼きおせんべいのガリッと乾いた感じではなく、ぬれせん的な湿り気に、噛みごたえをプラスしたようなビスケットです。

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味はというと、最初にオランダお菓子ではお馴染のスパイス、アニスシードが口の中をかけめぐり、後でスペキュラース味が残るという、スパイス強め。ペパーノーテンと似ています。それもそのはず、型抜きをした後の生地でペパーノーテンを作ることがあるそうです。

初めて体験する味に、慣れずにさよならするか、スパイスの効いた味がクセになってくるか。オランダ生活になれるかなれないかの関門と、とれなくもない。外国からの人が醤油味に慣れていくか?に似ているかもしれません。

なぜこのスパイスをビスケットに練りこむに至ったか、なぜオランダだけシンタクラースを祝うのか。ひとつのビスケットにも、その国が紡ぐ深~い物語があるのです。

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スーパーの他、パン屋さんでも売っています


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季節のスパイスクッキー Speculaas

11月の声を聞くと、オランダ全土はザワザワしてきます(特に子ども)。それはシンタクラースの行事月に入るからです。

一年の行事のなかで最も盛大かつオランダ人がもっとも大切にしているシンタクラース。サンタクロースおよびクリスマスの原型と言われています。

11月中旬、シンタクラースという赤い帽子に白いヒゲの聖人がお供のズワルトピートを連れて蒸気船に乗ってスペインからオランダにやってきます。オランダ中に散らばるよい子を訪ねて歩き、12月5日にプレゼントを配って、翌日再びスペインに戻ります。

シンタクラースが船でやってくる様子は生中継されるほどで、スペインに帰るまでの2週間あまり、彼らを街中で見かけることもあります。最近はこのズワルトピートの真っ黒な顔が人種差別だと物議をかもしていますが、かえって煽っているのではないかという気がしないでもないです。とにかく、楽しみにしている子どもの夢の邪魔になるようなことにならないといいなと思うのでした。自分がオランダで子どもだったら、眼キラキラの行事だったと思うもの。

さて、そんなシンタクラース時期に配られるお菓子の中にスペキュラースという茶色いクッキーがあります。コショウ、シナモン、ジンジャー、クローブ、カルダモン、ナツメグが配合された独特の味がするスパイスクッキーです。聖ニコラス由来の模様やイメージを表面にかたどるのが特徴です。最近は、11月のみならず、スーパーなどで一年中買えるようになりました。でも、せっかくならパン屋さんでこの時期に自家製スペキュラースを食べたいものです。

スパイスがかなり効いた味ですが、シナモン好きな人ならいける味です。日本では出合わないツンとくる風味と、真っ赤な帽子に真っ白おひげのシンタクラース。馴染みはないけれど、おいしいスペキュラースに、なぜか、『ブレーメンの音楽隊』の暗いけれど魅力たっぷりのおはなしや挿絵に目が離せなくなった、小さい頃を思い出してしまいます。

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アンティーク市で、スペキュラース用の木型が見つかります。

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Pepernoten 冬の行事の一口パン?

クッキーとしてオランダでは有名なお菓子ですが、私には、どうしても湿った乾パン(湿っているなら乾パンではないか…)としか思えないので、菓子パンとして紹介してしまいます。

名前はペーパーノーテン。胡椒ナッツという意味ですが、胡椒も、ナッツも関係ありません。ナツメグ、グローブ、シナモン、アニス、ジンジャーと香辛料がたっぷり効かせた一口大のクッキーです。クッキーのように乾いたものもありますが、しっとりとしたパンの耳のような形状のものもあります。

このお菓子は、オランダの冬の大切な行事であるシンタクラースのお祭りのときに食べます。シンタクラースのお祭りとは、11月中旬、聖ニコラウスがズワルトピートという従者を率いてスペインから船でやってきて、オランダ中のよい子に贈り物をしてまわり、12月6日にスペインに戻るというもので、オランダ版クリスマスといえるでしょう。クリスマスも祝いますが、シンタクラースオランダ上陸が生中継されるほど、オランダ人にとってはシンタクラースのほうが大切なようです。

その時期になると、このペパーノーテンのほか、マジパンやアルファベットのチョコレートなどがスーパーやベーカリーの店頭を賑わします。ズワルトピートは麻袋をしょって、街から街へと忙しくお菓子を配ります。家庭を訪ねてペパーノーテンをバラバラとばらまくこともあるそう。喜びを爆発させる子供達の顔が目に浮かびそうですね。

さて、このペパーノーテンのお味は。香辛料が強いです。なじみが薄いアニスの香りがきつく、あまり好きじゃないという日本の人も多いです、残念ながら。私もペパーノーテンに関してはフラットな感想です(嫌いでもないが、好きでもない)。

食べ物は単独で成り立っているものではなく、その国の文化や習慣、個人の思い出と深くつながっています。オランダでシンタクラースのお祭りを見たり、季節の移り変わりを肌で感じるような体験を重ねることで、ペパーノーテンの感想も変わっていくのだと思います。

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