オランダの茶色いパン

Digging into the taste of bread in Holland


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やっぱりぶどうぱん Krentenbol

レーズンまたはカラント(黒スグリ)が入った、ふわふわの丸いパン。特にオランダのパンというわけではなく、イギリスやドイツにもあります。

日本でもぶどうパンはおなじみですが、こちらのパンとはぶどう含有量が違います。レーズンあるいはカラント、あるいはその両方がゴロゴロ入っています。レーズン好きなら大満足ですが、そうでもない私にはちょっとレーズンが多すぎて、素パン部分をもう少し残してほしいなという印象でした。たいやきも、あんこたっぷりの胴よりも、しっぽが好きなもんで。

s-IMG_4148このぶどうパン、その昔、カソリック教会でお葬式の時に近隣や貧しい人にふるまわれていたそうです。古くからあるパンだからか、はたまたお葬式にふるまわれていたという歴史があるからか、オールドファッションなパンというイメージがあるようです。今はやりのスペルト小麦パンとか、ライのリーンブレッドとかを好む人からは、そっぽを向かれている不遇な扱いを受けています。

そういったリーン系のパンとか、食材にこだわったお菓子などを置いている今風のおしゃれなベーカリーを経営する知り合いに、「あなたのお店でいちばん売れているパンって何?」と聞いたら、苦々しい笑顔をうかべ、「Krentenbolなんだよね、実は…」。

たいていのパンは、お店のオーブンで焼いているのだけれど、Krentenbolは工場で焼いてお店に入れているのだとか。お店いちおしのこだわりのアイテムではなく、何の変哲もないオーソドックスなぶどうパンが稼ぎ頭という皮肉。「なんだかなーと思うんだけど、はずせないアイテムなんだよ、Krentenbolは」

リーン系だ、スペルトだ、なんだかんだと言いながらも、手がのびるのはやっぱりKrentenbol。トレンドと健康を意識しているのだけど、心の奥底が求めているのは、昔から食べつけているぶどうパン。安心するのかな。

Krentenbol、そのままかぶるよりも、横に切ってバターをたっぷりつけるか、チーズをはさんで食べるのが主流です。

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食パンふりかけ Hagelslag

幼い頃、どういった理由かは忘れましたが、朝食テーブルに母親がいないことがありました。出勤前で忙しい父が代わりに幼い私と兄の朝食を用意してくれるのですが、そういうとき、父が出してくれたのが、トーストしない食パンとココアパウダー。ココアパウダーを小さじ一杯にも満たないお湯で溶かしてペースト状にして、それをのべーっと食パンに塗ってくれるのです。「ココアは飲むもの!」と口うるさい母もおらず、手をココアペーストでベタベタにしても怒られず。父はこうるさい子供を黙らせてちゃっちゃと済ませたいために、ココアペースト食パンを思いついたのかもしれませんが、私にとっては規律も一気にゆるんで、イケナイことをしているような密やかな楽しみがありました。

ここ、オランダにおいては、私のようにコソコソする必要はありません。なんたって、食パンのふりかけが堂々と売られているのですから。ふりかけの名前はHagelslag。訳すとスプリンクル。日本語ならふりかけです。Boterham11

スーパーでは一角がHagelslagコーナーになっています。ミルクチョコ、ダークチョコ、ホワイトチョコ、フルーツ味と種類もさまざま。いわゆるスプレータイプ、削りタイプと形もいろいろ。1パックに色々な味が小分けにされているやつや大型タイプもあったりとバラエティがあることから、アメリカの家庭で色んなシリアルを取り揃えるように、一家に数種類常備なのかもしれませんね。

食パンにバターを塗って、シャカシャカと振りかけます。山盛りにふりかけても大甘になりません。甘さひかえめにしているのかしらん。

朝食からチョコって、大人になった今でもやっぱり嬉しいです。

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Ontbijtkoek  あまーい朝食ケーキ

オランダ語で朝食はOntbijt(オントベイト)といいます。朝食を名前に冠するこの棒状のケーキは、店によって微妙に味が違いますが、共通しているのは「ずっしり重いこと」「甘いこと」「スパイスが効いていること」です。

IMG_4118歴史をひもとくと、パン屋の倉庫にある残りパンやパンくずをぎゅぎゅーっと圧縮して作ったのが始まりだとか。その頃、東インド会社のもとインドやインドネシアとの貿易で栄えたオランダには、エキゾチックなスパイスがどんどん入ってきました。パン屋さんは未知なるこれらの香辛料でいろいろなパンを考案していったそうです。日本でも、「このパン、どうにか日本ぽくならんかなぁ」(なぜか大阪弁)とアンパンを作ったわけですから、何か新しいものに出合うとローカライズしたくなるのは人間の性かもしれませんね。

このオントベイトクック、食感はパウンドケーキよりもにっちりした感じ、確かに香辛料がよく効いています。ライ麦を使用し、香辛料はグローブ、シナモン、ブラックペッパーが必須で、アニスシード、コリアンダーシードが入ることもあるようです。2センチくらいにスライスし、片面にバターをたっぷりつけて楽しみます。

けっこう甘いし、味も個性があるので毎日だと飽きそうですが、しばらく食べていないと無性に懐かしくなるパンです。オランダに昔在住していた友人に私のオランダ行きを告げると、「オントベイトクック、持って帰ってきてー!!」。お土産に持ち帰り、彼女を含む数人で切り分けて食べました。その場にいた人々は全員オランダに住んだことのある人たちで、みな口ぐちに「そうそう、この味~」と懐かしそうでした。

不思議な魅力があるパンです。


Tosti 一口スナックホットサンド

Tosti(トスティ)は、トーストした食パンに具材を挟んだもので、日本ではホットサンドと言われているものです。

オランダの食パンは、縦×横が12センチほどなので、日本のホットサンドよりも小ぶりです。具材のボリュームもひかえめ。なので、朝食や、小腹がすいた時にささっと食べることが多いです。Tostiのメニューがあるカフェも多く、いちばん人気であるハム&チーズのほか、サーモン、チョリソ、チキン、ツナなど具材も色々。IMG_2932

オランダでは生パンというかトーストしないパンを食べることが多いので、カリッとトーストされたパンが出てくると、何となくホッとします。生パンが常食ではなかったのだなぁと改めて思ったりします。

具材によりますが、カフェでトスティを頼むと写真のように、ソースが一緒についてくることがあります。ソースはケチャップです。パンにちょんちょんとつけて食べるのだと思うのですが、具材にも味があるし、そもそもいるか?という気もします。

そこで気づきました。それは、ケチャップとオランダ人の距離感です。日本ではケチャップはどの家庭の冷蔵庫にもある必須調味料だと思うのですが、オランダではそうではないようです。

私の観察では、オランダ人の必需調味料はマヨネーズです。街角スナックのいちばん人気パタット(ポテトフライ)も人気ソースはマヨネーズで、ポテトの2~3本はマヨネーズまみれになるほどドボッとかけてくれます。その気前の良さは、ちょっと引いてしまうほどです。

日本では、マヨネーズ好きな人のことをマヨラーと呼びますよね。でも、ケチャップ好きな人のことをケチャラーとか、味噌好きな人のことをミソラーとか呼びませんよね。それは、当たり前の調味料にはあえてあだ名をつけるまでもなく、ちょっと距離があるというか、特別感がある調味料だからこそ愛好家の呼び名をつけたいという心理が働いているのかもしれません。

そのような角度から見ると、オランダ人とケチャップの関係は、日本人とマヨネーズの関係に似ているのかも。「好きかどうかわからないから、別にしとくね」という特別扱いというか、ためらいを、そこに感じます。

ケチャップって、世界中、当たり前の調味料だと思っていたので、その逡巡を含む取り扱いは眼からウロコでした。洋物はやっぱりアメリカの影響が大きかったのだなと、トスティにケチャップをちょびちょびつけながら再確認したのでした。


Beschuit  赤ちゃん誕生を祝うラスク

直径8センチ、厚さ5ミリくらいの丸いパンで、ビスハウトといいます。パンというより、ラスクの部類に入ります。

主に3つの食べ方があります。IMG_2206

一つ目は朝食として。バターやジャムを塗ったり、イチゴをのせたりします。ビスハウト自体にはほんのりとした甘味があるだけなので、何をのせても合います。日本のラスクよりもパンの味を残している感じです。パン粉に砂糖をふりかけて食べたらこんな味になるでしょうか(しませんが)。

二つ目は病気になった時。浅皿にビスハウトをおき、砂糖をパラパラとふりかけ、温かい紅茶を注いでビスハウトをひたし、ぐずぐずになったビスハウトをスプーンですくって食べるそうです。日本でいうところのおかゆのような存在でしょうか。病気になった時のお母さんとビスハウトの温かい思い出をもつオランダ人もいそうですね。

三つ目は赤ちゃんが誕生した時。ビスハウトにmuisjes(小さなネズミという意味)と呼ばれるトッピングをふりかけ、赤ちゃん誕生を祝いにかけつけた友人などにふるまいます。男の子なら青、女の子ならピンクだそう。このmuisjesですが、アニシードというアニスの果実を砂糖でコーティングしたものです。果実の細い茎は確かにネズミのしっぽに似ていますね。アニシードは授乳期の母親によいとされ、ネズミは子孫繁栄の象徴。17世紀から続く習慣だそうです。

写真:http://www.traditie.nl/

写真:http://www.traditie.nl/

人の暮らしによりそう食べ物には、何かストーリーがある。そんなことを思い起こさせてくれるパンです。