オランダの茶色いパン

Digging into the taste of bread in Holland


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パイ考 Pasteitje

惣菜パンにはあまり種類がないと前に書きました。その考えを少し改めたいと思います。

「日本のパン屋さんで見られるハムマヨパンのような普通のパン生地の惣菜パンがないが、惣菜パンはある」

普通のパン生地じゃないなら何の生地か。それはパイ生地です。

 

その外見に、生まれてから今までの脳内パン記録データがちゃかちゃかと動き、「甘」を抽出してしまいますが、その総菜パイは「インドネシア風」でした。中にはサンバルなどで味付けした挽き肉が入っていました。

パイはオランダ語でPastei。Pasteitjeだと小型のパイという意味になります。日本だとパイ生地はアップルパイとか、ベリー類がのっかったものとか、お菓子パンに多いと思うのですが、オランダではどちらかというと惣菜系パンに振り分けられるようです。1年いたイギリスでも、ペーストリーという名でパイ生地の大型の惣菜パンが各種売られていて、よくランチにしたものです。日本では唯一ミートパイくらいでしょうか。

”Pastei”で画像検索してみたところ形は違えども惣菜パンがずらずら出てきました。”パイ”で検索してみるとお菓子パンがずらずら。形は違えどもそのほとんどがアップルパイでした。パイ生地へのアプローチがまったく違うのは明らかです。オランダでは普通のパン生地を惣菜パンにする発想がないようで、日本では、パイ=甘いお菓子パンの固定概念が強すぎるようです。推測ですが、日本に初めて紹介されたパイはお菓子で、後に甘いものとして発展していったのではないでしょうか。

一方、ヨーロッパでは甘いパイもありますが、食事パイも並行して発展していったのだと思います。普通のパン生地は白ごはんのように素を保って、こしひかりやささにしきのように小麦粉の配合や種類で発展していき、惣菜パンはパイなど他のパン生地で発展していったとか。

日本では食パン、カレーパン、ソーセージパンなどは同じレベルで買うと思うのですが、オランダでは総菜パンを買う機会は食パンほどではありません。ちょっと遠い存在なのか、買うときのシチュエーションや気分も違うようです。少なくともツレのオランダ人は。おかずパンが食べたければ食パンの上に何かのっければいいわけで、わざわざ惣菜パイに手をのばす必要もないというか。表で小腹がすいた時のスナックようです。

 

 

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パンにのっけるサラダ事情 Beleg salade

ポテトサラダが好きです。ポテサラを買って、たまに作ってパンにのっけたり、サンドイッチもポテトサラダに手がのびます。

オランダでもイモ、ハム、キュウリなど材料はスーパーに揃っているので作ろうと思えば作れます(まだ試していないのですが)。そもそも、売っているのか、ポテトサラダ。というか、パンのサラダ事情はどうなっているのだろうか。思い立ち、スーパーを探検してみました。

パンやカナッペなどにのせるサラダはBeleg saladeと総称します。Belegはトッピングという意味です。サンドイッチのように”挟む”ことはあまりなく、1枚のパンにぬりぬりすることが多いようです。”挟む”のは、例えばピクニックランチとか、オフィスランチとか持ち運びしやすくor手を汚さずor食べやすくといった便宜上の行いのようです。

さて、スーパーには、Beleg saladeコーナーがあって、ずらずらずらーっと商品が並んでいました。全部買うわけにはいかないので、おいしそうなものをチョイスしてみました。

クリーミーカニサラダです。カニカマと思われるカニ肉がたくさん入っていました。日本のカニカマよりもややかためで、タラバっぽい食感があるので、より本物の食材に忠実かもしれません。クリーミーという名の割には、ぶっつぶつに切ったカニがゴロゴロ入っていたので、パンにクリーミーにのっけるというわけにはいかず、ボロボロ落ちていくので若干食べにくかったです。

スパイシースリナム風放し飼い鶏の卵のサラダ。スリナムは南アフリカにある小さな国で、オランダによる植民地支配がありました。今でも公用語はオランダ語だそうです。スリナムのことは恥ずかしながらよく知らないのですが、オランダではスリナム風というと、カレー味になることが多いようです。卵とカレーの魅惑の組み合わせ。スパイシーと小さく書いてありますが、特に辛くはなかったです。カレーであることは認知できたのですが、なじみのないカレー味でした。大阪のイカリソースから引っ越してきた東京のブルドックソースにスイッチした時、味に違和感を覚えた小さい頃を思い出しました。

ハムサラダのマヨ和えはスーパーではなく、デリで買い求めました。ピクルスが入っています。加工肉大国だけあって、気前のよいハムの含有量。こちらのマヨネーズは日本のマヨネーズよりすっぱさがかなり抑えられており、クリーミーな卵ソースといった感じです。ハムサラダマヨ和えと聞いて、マヨ=酸っぱい味を自動構築するも、すっぱさの主役がピクルスだったので、脳の中の味記憶細胞が若干混乱しました。

 

のっけトッピングのほか、ぬりぬりスプレッドもあります。

クリーミーで濃厚。サーモンは文句なしにおいしいです。リッチな味なので、塗りすぎるとしつこくなります。スーパーではさまざまなはっぱのサラダが売っており、ルッコラだけどっさり入ったパックもあります。サーモンの味とちょっぴりぴりっとくるルッコラの相性は抜群です。

最後に。ナゾのペースト、Filet americain。

アメリカ? フィレ?とネーミングが謎だったのですが、調べてみたら「タルタルステーキ」という意味でした。Wikiによると、タルタルステーキとは、タタール人の料理がヨーロッパに伝わったとされ、馬肉ではなく、牛を生肉を使うようになり、くさみを消すために香辛料を多用したそうです。あるいは、ヨーロッパ料理であったが、生の挽き肉を食べるのが野蛮ということからタルタル人の名を使うようになったという説もあるようです。で、そのタルタルステーキを焼いたのがドイツのハンブルグ地方の料理ハンバーグで、そのハンバーグはドイツではフリカデレというそうです。そうか、オランダの街角スナック、フリカンデルの元はハンバーグだったのだ!

ペーストの正体は分かりましたが、ネーミングが未だ謎。なぜアメリカを冠するのか。さらに調べる必要がありそうです。ちなみに、このフィレアメリカン。安いのを買ったせいもあって、妙なケチャップ味があってまずい。香辛料が効くというより、香辛料でごまかしています。この味、多分ウソです。一応、生肉ですし、上等のものを買ったほうが賢明です。

あ、そうだ。ポテトサラダはありませんでした!

 


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はさみすぎるパンたち Luxe broodje

オランダ人のお宅にお昼どきにお呼ばれすると、食パン数種、チーズ数種、ハム数種、ジャム数種がテーブルにずらっと並んだランチを用意してくれることがよくあります。パン1枚を手に取り、好きな具材をとるのですが、”食パン1枚・具1種”が暗黙のお約束です。チーズにハムをのっけようと思えばできなくもないし、そうしたとしても誰も何も言いませんが、どうもテーブルマナー反するようで、裕福なご友人にお呼ばれした時も、みなさんパン1枚とってチーズのっけ、また1枚とってはハムのっけを繰り返していました。

1枚1種のピューリタン的な抑制の反動かどうかはわかりませんが、カフェでパンメニューを頼むと、驚愕するボリュームの具材がはさまれたパンがやってきます。具材が溢れてパンが見えないほどです。かぶりつきはまず無理。オランダ人に習ってフォーク&ナイフでいただきます。

そんな具材もりもりのパンは、Luxe broodjeとも呼ばれています。Luxeは贅沢な、豪華な、という意味。メニューにLuxeと書かれているわけではなく、カフェでパンメニューを注文するとLuxe仕立てで出てくるのです。

日本のカフェにおけるパンメニューは、ベーカリーカフェではない限り、具材がはみでずにきれいに均一にはさまったサンドイッチとか、主菜があって付け合わせとして各種パンとか、軽食および脇役からどうしても昇格できない存在のように思います。一方、オランダのカフェでは、茶色パン、サンドイッチ、パニーニ、トスティなどなど主流メニューで、スープやサラダとかを頼むと、パンは付け合わせになります。第一はさめないですよね。

具材はさみすぎLuxeパンは、和食でいうところの丼めし的な存在なんではと推察します。定食における茶碗ごはんではなく、おかずと一緒にごはんをがつっと食べたい時がありますよね。かつ丼とか、親子丼とか、天丼とか。ごはんと一緒におかず食べた!っていう満足感が得られますよね。

オランダ人友人と一緒にランチをした時、「あまりお腹すいてないのよね~。トスティにしよっと」と友達はひとりごちていました。というわけで、カフェでランチをする時、どんぶりモードなら普通のパンメニューを、お茶漬けモードならトスティやパニーニを頼むようにしましょう。

 


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元気印の用心棒 Uitsmijter

食パンに少なくとも目玉焼き2個のせ、トッピングにスペック(ベーコン)、ハム、あるいはチーズ。1枚でボリューム満点のパンごはんはUitsmijter(アウツメーター)という名前です。IMG_0487

カフェで相方がUitsmijterを注文します。普段は優柔不断気味な彼ですが、アウツメーターを注文する時は妙にきっぱり、はっきりしています。今日はこれでしょ!と力強くメニューを指さす感じ。

突然話は変わりますが、イギリス家族の家に下宿していた時です。朝からカーブーツセールスに繰り出したことがありました。カーブーツセールスとは家の不要になった物を車のトランクに詰め込み、所定の駐車場で売りさばくフリーマーケットです。朝早くからひと仕事終えたランドロードが「今朝はフルでしょ!」と眼をキラと輝かせ、パンをトースターに入れ、マッシュルーム、ベーコンを炒め、トマトを焼き、缶詰ビーンズを開けて、一皿にどどーんとフル・イングリッシュブレックファストを盛りつけてくれました。イングリッシュブレックファストはボリューム満点なので、毎日ではなく、ここ一番の時に食べるものなのだと、その時知りました。

相方も朝もはよから元気に活動した後にアウツメーターを頼むことが多いよう。すきっぱらにがつんとチャージするごはんなのですね。

なぜ目玉焼きのせパンがUitsmijterという名前なのか。Uitsmijterを辞書で調べると「パンに肉またはチーズと目玉焼きをのせた料理」のほかに、(酒場などの)用心棒という意味があります。さらにインターネットで調べると、語源は1)フライパンに卵を放り投げることから 2)ナイトクラブやカフェが閉まる直前にだされるメニューだったからと諸説あるようです。

ドイツでは同じような目玉焼きパンごはんをStrammer Maxと呼びます。訳すと…、ゴホン、カタくなった×ん×だそうです。用心棒だの、カタくなったち××だの、やけに威勢がいいですね。男子の食べ物なのかしらん。でも、ベルギーでは、クロックムッシュに目玉焼きがのっかると、クロック・マダムになったしなぁ。


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食パンふりかけ Hagelslag

幼い頃、どういった理由かは忘れましたが、朝食テーブルに母親がいないことがありました。出勤前で忙しい父が代わりに幼い私と兄の朝食を用意してくれるのですが、そういうとき、父が出してくれたのが、トーストしない食パンとココアパウダー。ココアパウダーを小さじ一杯にも満たないお湯で溶かしてペースト状にして、それをのべーっと食パンに塗ってくれるのです。「ココアは飲むもの!」と口うるさい母もおらず、手をココアペーストでベタベタにしても怒られず。父はこうるさい子供を黙らせてちゃっちゃと済ませたいために、ココアペースト食パンを思いついたのかもしれませんが、私にとっては規律も一気にゆるんで、イケナイことをしているような密やかな楽しみがありました。

ここ、オランダにおいては、私のようにコソコソする必要はありません。なんたって、食パンのふりかけが堂々と売られているのですから。ふりかけの名前はHagelslag。訳すとスプリンクル。日本語ならふりかけです。Boterham11

スーパーでは一角がHagelslagコーナーになっています。ミルクチョコ、ダークチョコ、ホワイトチョコ、フルーツ味と種類もさまざま。いわゆるスプレータイプ、削りタイプと形もいろいろ。1パックに色々な味が小分けにされているやつや大型タイプもあったりとバラエティがあることから、アメリカの家庭で色んなシリアルを取り揃えるように、一家に数種類常備なのかもしれませんね。

食パンにバターを塗って、シャカシャカと振りかけます。山盛りにふりかけても大甘になりません。甘さひかえめにしているのかしらん。

朝食からチョコって、大人になった今でもやっぱり嬉しいです。

Boterham10


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それぞれの惣菜パン Kappertjes & tomaat broodtaart

カツサンド、焼きそばパン、ハムマヨパン、ツナパン、カレーパン。日本にはいろいろな惣菜パンがあります。オランダの惣菜パン事情はどうなっているのかしらんと、パン屋さんに行ってみました。

ない。圧倒的に少ない。ハムなんて日本の比じゃないほど種類が多くておいしいのに、ハムパンもない。チーズも日本よりめちゃくちゃ安くておいしいのに、ハムチーズパンもない。おかずパンという考えがないのでしょうか。おかずパンにするなら、食パンの上にのっければいいわけで、あえて作る必要はない、という考えなのでしょうか。素のパンに手を加え、品を加えて別物とするのはよくない、パンはパンじゃというスタンスなのでしょうか。それとも、オランダパン業界的には、いろんなおかずパンがある日本こそ、若干おかしな道を歩んでいると捉えるのでしょうか。

IMG_5597それでもあきらめないでパン屋に入るたびに総菜パンを探してみたら、Le Perronというパン屋にありました。トマトとケッパーがのっかった分厚いパン、Kappertjes & tomaat broodtaartです。日本の惣菜パンによくあるフィリング系ではなく、トッピング系です。でかい。20センチはありそう。厚い。6センチはありそう。マヨルカ島のエンサイマーダのようにうずまき状になっており、表面にかかっているチーズがほんのりと香ります。これ、どうやって食べるのかしらん。かぶる?にしては大きすぎる。

ケッパー、トマト、ハーブ、チーズとトッピングは賑やかで、ボリューム感はあるのですが、中に何も入っていないので、なんというか、カレーパンやハムマヨパンのようにおかず食べました!という満足感は得られません。素通りする惣菜パンといった感じです。それだったら自分で食パンに何かのっけて食べたほうがいいかなぁ。

惣菜パンに対するアプローチがあまりにも違いすぎて、よさがよくわかりませんでした。というか、オランダでは、惣菜パンの概念を変える必要がありそうです。国が変わればパンも変わる。そんなことを痛感したパンでした。


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Bakker Van Vessem ハーレムのベーカリー

新しいまちに引っ越して落ち着いてきた頃、まず探すのが、まちのパン屋さんです。忙しい日はスーパーや全国チェーン展開するベーカリーでささっと買いますが、時間があるときに立ち寄れるまちおいしいパン屋さんがあれば、そのまちに一気に愛着がわきます。しかも、そのまちに根をしっかりと下ろしているパン屋さんなら言うことありません。

アムステルダIMG_2619ムから電車で約15分、しっとりと落ち着いた古都ハーレムに着きます。219ikganaar

ハーレムを中心に展開しているBakker van Vessemは、店がまえといい、パンといい、ハーレムに住んでいてよかったと思わせてくれる「まちのパン屋さん」です。

私感ですが、まちのパン屋は「なんとなくまちにある」と「まちのグレードをあげる」と2種類あると思います。なんとなく系はスーパーで買うがごとく必要だから買うという使い方になるのですが、グレードをあげる系は大げさに言えば、そのまちに住んでいることを誇りに思う気持ちにさせてくれます。Van Vessemは間違いなく後者です。

リーン系、惣菜系、甘系とオールラウンドにアイテムが揃っており、お菓子もあります。店にオーブンがあるので焼きたても。黒板には「○○は○時に焼き上がります」というメッセージがあがっています。その月限定パンなどもあってパン好きの心をくすぐります。

オランダのベーカリーはレジカウンターの後ろにバケットや食パンなどの食事パンが並べられている場合が多いのですが、言葉が不自由でかつ近眼の私には「これください」ならまだしも、「あのパンはどんなパンですか?」と聞きたいのに聞けない(言えても答えがわからない)もどかしさが常にありました。Van Vessemはリーン系の食事パンも店内のラックに並べてあるので、じっくり見比べることができるのが嬉しいです。

パンひとつ買うのにそんなに時間をかけるかという意見もあろうかと思いますが、香ばしい小麦の香りに包まれながら、あらおいしそう、こっちもおいしそうと店内をさまようのも楽しいものです。